アオイちゃんが帰って行ったあとも、あかねちゃんはしみじみと、机の上に残された一枚の紙を眺めていました。
よれよれで形も崩れていて、周りの余白に飲み込まれしまいそうなくらい弱々しい字でしたが、確かに紙の上にはアオイちゃんの字で「あかねちゃん」と書かれていました。
どんなに偉大な書家だって、これほどあかねちゃんの心を揺さぶる字を書くことはできなかったでしょう。
しばらくして、あかねちゃんはその紙を丁寧に畳んで、最初に使っていたあいうえおの絵本に挟みました。そしてあの「だいじなもの」の箱の、一番上にしまいました。
およそ10年ぶりの、箱の中身の更新です。そしてきっと、これからも箱の中には、アオイちゃんと一緒に過ごす中で見つかっていく新しい「だいじなもの」が入れられていくことでしょう。
(そうなったら、箱ももうちょっと大きなものにしなきゃいけないかもね。あっ、その場合新しい箱の名前も決めないと)
そんなことを考えることすら楽しくて、あかねちゃんの顔は自然とほころんでしまうのでした。


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