「あっついね〜…」
「そうだね〜…」
初夏の日差しが情け容赦なく、家路を辿る小学生たちに照りつけていました。へとへとという音が聞こえてきそうなほど、あかねちゃんとさくらちゃんの二人は疲れ果てた様子で歩いています。ぶつぶつとさくらちゃんが呟く恨み言のようなものを、暑さで意識が朦朧とし始めた中、あかねちゃんは隣で聞いていました。適当に返事するばかりで内容はほとんどあかねちゃんの頭には入ってきていなかったのですが、さくらちゃんの愚痴はこの暑い中で運動会の練習をさせるなんてどうかしているといった内容に終始していました。
「あかねは運動会の個人種目何に出るんだっけ…」
反応の鈍い今のあかねちゃんでは愚痴の吐き甲斐がないと感じたのか、さくらちゃんの話はいつの間にか別の方へ移っていました。
「ピンポン球スプーンに乗せて走るやつだよ」
「あーあれか…私苦手なんだよなー」
今年も含めてさくらちゃんはずっと女子リレーのアンカーを務めているので、ピンポン球競争をしているところは見たことがありませんが、速く走ることばかり考えているせいでピンポン球を何度も落としてしまうさくらちゃんの姿が目に浮かぶようでした。彼女に言わせると、スポーツがスポーツたる条件は何物にも変えがたいような爽快感を感じる瞬間が存在することであり、ピンポン球競争とかいうのは爽快感どころかイライラが募っていくばかりで運動会の種目を名乗るのもおこがましいのだそうです。
さて、さくらちゃんのようにはっきりと感情を吐露するようなことはないものの、あかねちゃんの方も続く暑さと積もる疲労の合わせ技にはだいぶんこたえている様子でした。そんなさくらちゃんが苦を乗り切ることができたのは、この後、家に帰った後で待っているであろう、ある「楽しみ」のおかげでした。
さくらちゃんと別れると、あかねちゃんは脱兎のごとく駆け出しました。本当はさくらちゃんの愚痴に適当に返事をしていたのも、半分はそわそわしていたからだったのですが、そのことを勘付かれた様子はなかったのであかねちゃんはほっとしていました。
「ただいまっ」
玄関の扉をくぐるのとほとんど同時に、ぽいぽいっと軽快に靴を脱ぎ、その勢いのまま自分の部屋に駆け込みました。部屋に入った途端にあかねちゃんの足の動きはぴたっと止まり、視線はある一点に釘付けになっているようでした。
その視線の先には、いつもの藤色のワンピースに身を包んだ、小人のアオイちゃんの姿がありました。
「おかえりなさい、あかねちゃん」
あかねちゃんの文字教室を卒業した後も、アオイちゃんは週に一度ほどの頻度で部屋に遊びに来てくれていました。あかねちゃんに今日のアオイちゃんの来訪が予想できていたのも、ちょうど今日が、前回会いにきてくれた日から一週間経った日だったからです。
「あっ、部屋の中暑かったでしょ?クーラー入れるね」
クーラーをつけると、既に乗っているアオイちゃんを驚かさないように気をつけてベッドに寝転びました。
「はー涼しぃー…」
快適さに陶酔するあまりに、あかねちゃんは喋るのも忘れてしまっていました。くいっと顔を横に回してみると、そんな自分の縮図のようなアオイちゃんの姿があかねちゃんの目に映りました。ちらりと覗く白い首筋には、ちょうど見ているだけで涼しくなるような、陶器のような感じがありました。
「アオイちゃん、もしかしてあんまり汗とかかかない?」
見ているだけで暑かったさくらちゃんの汗だくな姿と比較してみたとき、アオイちゃんのそんな姿はますます不思議なものに感じられてきました。
「そんなことないよ、今だって汗びっちょりで…」
「本当?見えないなあ」
水滴が小さすぎて見えないのか、かいているのが分からないほどにアオイちゃんの汗が透き通っているのか…あるいはその両方かもしれません。
「ね、触って確かめてみてもいい…?」
「えっ…?」
そんな風に聞かれるとは思ってなかったのか、アオイちゃんは困惑の表情をあかねちゃんに返しています。実際これはあかねちゃんの咄嗟の思いつきで、決してここまで持っていくために汗のことを話題にしたわけではありません。ただ、アオイちゃんの汗が気になる気持ちと、アオイちゃんの体を触ってみたいという気持ちが偶然重なっただけにすぎないのです。
「…うん、いいよ」
しばらく考え込んだ末に、アオイちゃんはこう答えました。
「む、無理しなくてもいいんだよ!断ったって私別に何かしたりしないし」
今度はあかねちゃんが驚かされる番でした。なにしろ、絶対に断られると思っていたのです。
これまでアオイちゃんはずっと、あかねちゃんに触られることを怖がっていましたから…。
「無理なんてしてないよ。いいって言ったのは、その、あかねちゃんだからで……」
「アオイちゃん…」
アオイちゃんが、自分のことを信用している、と言ってくれている……あかねちゃんにとって、これほど嬉しいことが他にあるでしょうか。
「それじゃあ…お顔、触るね」
素肌の見えている部分で、いちばん汗をかきやすいのが頰のあたりだと思ったので、あかねちゃんはそうっとアオイちゃんの顔に指を近づけます。
(顔、やっぱりちっちゃいなあ…)
その顔の小ささは、こうして人差し指を近づけて比べてみると、より強く感じられるようでした。指の腹にすっぽり収まってしまう、パチンコ玉くらいの小ささです。
指が触れるか触れないかというとき、まるで注射器が刺さる寸前の子供みたいに、アオイちゃんはきゅっと目を瞑りました。
(怖いのかな。…ううん、怖いに決まってるよね)
どんなにあかねちゃんのことを信用していたとしても、指先だけで自分の顔の数倍の大きさである人差し指が近づけられて、怖いと感じないはずがありません。誤って潰されたり、骨を折られたり…そんな想像を避けられないほど、築かれたばかりの信用などでは決して埋めきれないほどに、あかねちゃんとアオイちゃんの間には体の大きさの違いがあるのです。
怖い時間は短いほうがいいと思ったので、あかねちゃんはさっさと確認を済ませてしまおうと思いました。
触れたアオイちゃんの頰はとても温かく、なぜか平常の人間の体温よりも少し高いようにさえ感じられました。そういえば、陶器のような白だった顔も、少しだけ赤くなっているような気がします。
「あ、本当。ちょっと濡れてるかも」
優しく2、3度アオイちゃんの頰をなでてみた後の指先には、雨粒の量にも満たないくらいの透き通った液体が滴っていました。
(これがアオイちゃんの汗、なのかなあ?)
何気なくその液体を舐めてみたところ、ほんのりと塩気を感じたので、どうやら本当にアオイちゃんの汗のようです。
「なっ、何やってるの!?」
「へ?」
聞こえた声に反応すると、何やらアオイちゃんが動転した様子でいます。
「だってあかねちゃん今、私の汗をぺろ、って…!」
「あー、それなら大丈夫だよ?アオイちゃんの汗結構おいしかったし」
「へ、変なこと言わないで!そもそもそういう問題じゃないよ!」
ひょっとするとアオイちゃんは、あかねちゃんに自分の汗を舐められたのが恥ずかしかったのかもしれません。たかが汗の一滴二滴でそこまで狼狽えなくても、とあかねちゃんはほっこりとした気分になりました。
しかし、そんな気分でいられたのもつかの間でした。
「ちょっと、帰ってきたら顔くらい見せなさいよね…」
この突然のお母さんの来訪は、あかねちゃんには予測できませんでした。
あかねちゃんの手元には、赤面していたのが一変青ざめて固まっているアオイちゃん。きっとあかねちゃんも同じような顔をしているのでしょう。暑さから来ているのではない嫌な汗が頰を伝い、ぽたぽたとアオイちゃんの周りに落ちています。
隠すにはもう遅すぎました。あかねちゃんが振り向いたとき、お母さんは既に注意をあかねちゃんの手元に向け、怪訝そうな表情を浮かべていたのです。
「…さっさと部屋に行って何をするのかと思ったら、人形遊び?」
「え、人形?」
真っ先にアオイちゃんのことを問い詰められてもおかしくない状況で、呆れたようにお母さんがそんなことを言ったものなので、拍子抜けしないではいられませんでした。
「あら、違うの?」
「あ、えっと……うん、そう!昨日寝る前にちょっと部屋片付けてたらこのお人形が出てきて、なんだか懐かしくなっちゃったの!あははは…」
「ふうーん…」
熊に出会ったら死んだふりをしろとはよく言いますが、どうやら小人が人間に見つかってしまった場合、生きていないふりをするのが有効なようです。
あかねちゃんは急いでアオイちゃんに目配せをします。しかしそんなことをするまでもなく、アオイちゃんは既にじっと固まって、お人形のふりを始めていました。律儀に息まで止めているようなので、いつまで持つのか見ていて不安になりました。
「…あんた、こんな人形持ってたっけ?」
何の断りもなくお母さんが横から手元を覗いてきたので、あかねちゃんは悲鳴に近い声をあげそうになります。
「も、貰ったんだよ。ほら、さくらちゃんがすぐ人形遊びとかおままごとに飽きて、お外で遊ぶようになっちゃったから。それでお母さんには見せてなかっただけで」
「はー、なるほどねえ」
とっさに考えた誤魔化しにしては悪くないと自分で自分を褒めてやりたい気分でしたが、そんな余裕はありませんでした。もっとも今言ったことはまるきり嘘というわけでもなく、あかねちゃんは昔実際に同じような理由でさくらちゃんからお人形の類を譲り受けていたのです。(貰ったのは皮膚が海苔の佃煮みたいな色の怪獣と額に肉の文字が書かれたキャラクターでしたが)
あかねちゃんが説明を終えた後も、お母さんはしばらく興味深そうにアオイちゃんを眺めていました。何しろ、お人形にしてはあまりにも皮膚や髪の質が生身の人間のそれに近いものですから、珍しがるのも無理はありません。
お母さんの視線を一身に受け止めている間も、アオイちゃんはピクリとも動かずお人形を演じ続けていましたが、その間アオイちゃんが感じているであろう緊張が、見ていて痛いほど伝わってきました。
(早く…早くどこか行ってよ…!)
お母さんの隣で、あかねちゃんはしきりに貧乏ゆすりをしています。
ボロが出る前に、いっそのことこの場でアオイちゃんを回収してどこかに隠してしまおうかと思いかけたとき、ようやくお母さんはあかねちゃんの隣から離れてくれました。
「ま、思い出に浸るのはいいけど、もうあんたもいい年なんだからほどほどにしときなさいね?」
「はーい…」
相変わらず呆れたような調子のお母さんの声を背中に受けながら、あかねちゃんが「頑張って、あと少しだから!」のメッセージを込めて両手を合わせるジェスチャーを送りました。返事をしないことが、そのメッセージに対してのアオイちゃんの返事でした。
「それはそうと、親戚のお家からメロンが送られてきたから、食べたかったら切ってあげるわよ」
「えっ、メロン!?食べる食べる!」
メロン、という言葉を聞いただけで、あかねちゃんの目も声もパッと輝きました。
こういうあたり、あかねちゃんもまだまだ子供だと言えるでしょう。
「ちゃんと手洗ってから来なさいよー」
そう言ってようやくお母さんは部屋から出て行きました。
足音が完全に部屋の向こうに消えると、その音に取って代わるように、今度は安堵の息を吐く音が聞こえました。
「ごめんねアオイちゃん、もう大丈夫だよ」
あかねちゃんは努めて優しい声をアオイちゃんにかけてあげました。
本当にもう、よく頑張ってくれたという気持ちでいっぱいでした。実に3分の間、アオイちゃんは息ができない苦しさと、見知らぬ人間に無遠慮に凝視される恐ろしさに耐えながら、お人形のフリを貫いたのです。3分と書くと短い時間に感じる人もあるかもしれませんが、そういう人も同じ体験をしてみれば、その3分の長さに気づき、その間一つもボロを出さなかった二人の辛抱強さに舌を巻くことになるでしょう。
ぷは、という文字通り気の抜けた音とともに、ようやくアオイちゃんはお人形から小人に戻りました。
「アオイちゃ——」
あかねちゃんはかけようとした言葉を中断せざるを得ませんでした。なぜかといえばその瞬間に、アオイちゃんの目から涙がぽろぽろとこぼれ落ち始めたからです。それも何か、尋常ではない泣きようでした。体は一目見て分かるくらいにかたかたと震えていて、顔は時間の経過とともにどんどん青ざめていき、さっきまでこの子が顔色一つ変えずお人形のフリをしていたのが嘘のように思えてしまうほどでした。洪水のような形でアオイちゃんを飲み込もうとする恐怖、それをずっとせき止めていた堤防のようなものが、気が緩んだことで決壊してしまったのでしょうか…。
早い話が、久しく見ていなかった、出会ったばかりの頃の怖がりなアオイちゃんに、今この時間は戻ってしまっているというわけです。
あかねちゃんはなんだか見ていられなくて、気づけばうずくまるようにして泣いているアオイちゃんの背中を、人差し指の先で撫でていました。アオイちゃんは気づいているのかいないのか、それでもしばらくは変わらずにえんえんと泣き伏していました。
「ぐす……。あの、私…」
「ん、なあに?」
思いっきり泣いたおかげでだいぶ落ち着きを取り戻したらしく、アオイちゃんは十余分ぶりにその口を開きました。
「じ、実は、あの人間さんに、スリッパで叩かれそうになったことがあって、それで……」
それを聞いて、ようやくあの尋常ならざる泣き方に納得がいきました。その時はきっと、陰から陰に素早く移動しているところをお母さんにたまたま見られて、ゴキブリか何かと勘違いされてしまったのでしょう。自分よりも何十、何百倍も大きいというばかりか、過去に死にそうな目に遭わされた相手に、無言で凝視され続ける……その間、アオイちゃんがどんなに怖い思いをしていたことでしょうか?
「そっか、それは怖かったね…」
よしよし、と撫でてあげたいところなのですが、あいにくというべきか、あかねちゃんは今指が塞がっているのでそれはできません。
仕方がないので、アオイちゃんが完全に立ち直るまで、しばらくこのままにしておいてあげようと思いました。
10秒が経ちました。
「……」
30秒が経ちました。
「………」
1分が経ちました。
「あのう……私、まだこうしてた方がいいかな?」
ずーっと動こうとしないアオイちゃんに、とうとうこう言いました。
どこからって?…そう、あかねちゃんの指からです。かれこれ、アオイちゃんが口を開く五分前くらいから、こうしてきゅっと、人差し指を抱きしめて離さないでいるのです。
「へ…?……わああっ!?ご、ごめんね…!私ってば、つい……」
「ううん、大丈夫。別に嫌だったわけじゃないよ」
なんだかアオイちゃんの反応が、指摘されて初めて自分がずーっと抱きついたままでいることに気づいて、慌てて離れた、といった風でした。(私が何も言わなかったら、アオイちゃんはずーっと私の指に抱きついたままだったのかな?)と思うと、もったいないことをしてしまったような気がしました。アオイちゃんが数秒前までの自分をひどく恥じているのを見るに、当分はもう同じようなことは起こらないように思えて、あかねちゃんはもったいなかったという気持ちをさらに強くしたのでした。
そもそも、なぜアオイちゃんがあかねちゃんの指に抱きつくようなことをしたのか気になっている人もあるでしょうから、その話をしておきましょう。
前にも書いた通り、あかねちゃんはしばらく顔を伏せて泣くアオイちゃんの背中を撫でていました。ですが…少し涙の勢いが収まってきたからか、アオイちゃんがやっと顔を上げた時、背中を撫でていたあかねちゃんの指はふっと止まりました。
そう、不謹慎は承知ながら、アオイちゃんの泣き顔を見た瞬間に、あかねちゃんは“きゅん”としてしまったのです。
そのすぐ後に浮かんだ考えがいけない考えであることは、あかねちゃん本人にも分かっていました。でも、どうしてもそれを試さずにはいられなくて、人差し指を背中から離して、そのまままだ泣いているアオイちゃんの目の前に差し出して見せました。
「む、胸は貸せないけど、私のここで泣いてもいいんだよ…?」
ここ、のところで、第一関節から上の部分をちょいちょいと動かしました。急に現れた人差し指を、アオイちゃんはしばらく泣きながら見つめているばかりでしたが、やがて…
きゅっ…。
(かっ、か………かわいい〜〜っ……!)
興奮のあまり叫びそうになるのを、あかねちゃんはなんとかこらえます。今の心中をもしアオイちゃんが知ったら、再び心を閉ざしてしまいかねませんから。しかし、人差し指に腕を回しつつ、そこに顔を埋めているアオイちゃんから目を離すことは、どうしてもできませんでした。
あかねちゃんは今までも何度かアオイちゃんが泣いているところを見てきましたが、そういうときにはきまって心を痛めていたはずでした。ですが、今日は全く状況が違っていました。
自分がそうさせてしまったという罪悪感のフィルターを外して見たとき、アオイちゃんが怖がって震えたり泣いたりしている姿は、とても可愛らしい姿としてあかねちゃんの目に映ったのです。楽天的な庇護欲と言い換えても良いかもしれません。
「ねえアオイちゃん、一緒にメロン食べに行かない?」
「めろん?」
「んーとねえ……甘くて丸くて冷たくて美味しい食べもの、かな。どう?」
ここでアオイちゃんの目がぱあっと輝いたのを見て、あかねちゃんは小さくガッツポーズをします。あかねちゃんと同じで、アオイちゃんも美味しいものには目がないのです。
「でもー、また他の人間さんに見られたら…」
そんな風に言いつつもそわそわしていて、気持ちは既にメロンの方に向いているのが丸わかりです。
「それなら、食べるまではここのポケットの中に隠れてるといいよ。食べてるときは…まあ見られそうになったら私がどうにかするから、ねっ?」
あと一押しとばかりに、あかねちゃんは言葉を続けます。
「ちゃ、ちゃんと守ってね?」
「うんうん、任せてよ!さ、乗って」
手に乗せたアオイちゃんを胸のポケットに入れると、あかねちゃんの心はようやく軽くなりました。
実のところ、今まで不安でいたのです。最前のアクシデントで、アオイちゃんが人間の怖さを再確認し、自分もまた出会ったばかりの頃のように、強く警戒されるようになってしまうのではないかと。
今やあかねちゃんが手を差し出すと、アオイちゃんは少しも躊躇せずにその上に乗ってくれます。一時的とはいえポケットに閉じ込められることに何の抵抗も示さないなんてことも、あの頃では考えられなかったことです。
それに何より、ようやくアオイちゃんに元気が戻ったことが、あかねちゃんには嬉しいのでした。
手を洗いに行こうと思ったとき、人差し指の先がまだ、アオイちゃんの涙でほんの少し濡れていることに気がつきました。
立ち止まって、今度はアオイちゃんの目が向いていないのをきちんと確認してから、指の先に残っている涙を、ぺろっと舐めてみました。
(ん、やっぱりしょっぱい)
それだけ確かめると、あかねちゃんは何事もなかったように再び歩き始めました。


