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7話 アオイちゃんとミドリちゃん

そして、次の日の朝、二人は昨日の言葉通りに、絵描きとそのモデルとして向かい合っていました。

「そういえば、人の絵を描くのなんて随分久しぶりかも…」

「そうなの?」

「そもそも、人と会うことがなかったから」

「あ、そーか…」

もしかしたら、気丈に振る舞っているけれど、本当はずっと寂しかったのかもしれない……なんて、アオイちゃんは考えました。あかねちゃんに会う前のアオイちゃんがそうだったみたいに。でも、そんな奥深くにある感情を読み取ろうとしても、ミドリちゃんの透徹した瞳にはのれんに腕押しです。本当にただ、他人に対する執着心が人よりも薄いだけだったとしても、彼女に限っては不思議ではない気がします。

話はそれっきりで、ミドリちゃんは真剣な面持ちで筆を動かし始めます。それだけミドリちゃんが集中していると、モデルをしているアオイちゃんの気も自然、引き締まってきます。

こうやって自分の絵を描かれるのって、なんか不思議な感じ。でも、嫌な気はしませんし、自分を描いた絵なんか見たって仕方ない、なんて気持ちはとっくに消えていました。ミドリちゃんがこれだけ真剣に描いてくれる自分の絵は、いったいどんなものになるのかと、気になってくるのは必然と言えるでしょう。

 

 

「へぇー、それで、アオイちゃんの絵はもうできあがったの?」

次の日。アオイちゃんはミドリちゃんの絵の話を聞かせるために、やっぱり内緒で、あかねちゃんの部屋を訪れていました。

「うん。しかもミドリちゃんね、私が気に入ってるのを見て、今度また私の好きな絵を描いてくれるっていうの!もう友達ってことでお金は気にしないって!こういうの、友達料金っていうのかな?」

「そ、それはちょっと違うような……というか、どこでそんな言葉覚えたの?」

あかねちゃんはそのあと、アオイちゃんから、小指に乗せることもできそうなくらいに小さな紙を渡されます。どうやら、これがミドリちゃんが描いたというアオイちゃんの絵のようです。見てみると確かに、その板の上には小さく何かが写されています。が、そのままではとても鑑賞できそうにありません。

あかねちゃんは机の中から虫眼鏡を取り出し、早速それを使って見てみました。

「あ、へえーこれが………いい絵だね。アオイちゃんの特徴をよく捉えられてる。それに、なんていうか落ち着きがあって……それでいて、優しい絵」

「すごいよね、ミドリちゃん。これで私たちと同じくらいの歳なんだよ?」

「うん。すごい。これだけの絵をかけて、それで、たった一人で色んなところを旅してるんでしょ?ほんと、すごいや……」

「でもね、どうもミドリちゃんにとっては、この絵は不満の残る出来だったみたいなの」

「そうなんだ、こんなに描けてるのに……多分、描いた本人にしか分からない感覚なんだろうな」

そのあとも、あかねちゃんはしばらくその絵を眺めて、もう十分見られたと思うと、アオイちゃんに返しました。

「私も、会ってみたいなあ……」

それから、あかねちゃんは独り言のつもりでそう小さく呟いたのですが、アオイちゃんにはしっかりと聞こえていました。