(あ、ああ……嫌だ、もう、めちゃくちゃだ、何もかも……)
握られて、締め上げられて、シェイクされて。無遠慮に見つめられて。
心身ともに、とうにグロッキー状態であった。
心菜が怖い。あの怪獣の前では、命がいくらあっても足りない。
(助けて、優奈)
29歳の大人が、6歳児を恐れ、11歳の女子に助けを求めるという状況に、もはや男自身も何の疑問も恥も抱かない。
優奈の靴が恋しい。あの時、あの中に迷わずに飛び込んでいれば、こんな目に遭うことも無く、今頃つま先の奥深くでトリップを迎えていたことだろう。やがて訪れるカタストロフィに、胸を躍らせながら。
それがどうだ。寸前のところでごちそうを奪われたどころか、いつものよりも数段下等な、とても食えたものではない餌を代わりに出される始末。こんなガキに何をされたって、心にぽっかり空いたこの穴を埋めることなどできるはずが————
ぼてん。
目の前に、「何か」が落とされた。


