AM12:50。
校門の前は、試験を終えて帰路に着く受験生たちでごった返していた。
緊張から解放された彼らは、皆一様に、どこか浮ついたような足取りで道を歩いていた。
——あの問題解けた?うん……だよねーっ。
——ねーねー何お昼食べてく?私来るときに気になるお店あって……。
耳を傾けるまでもなく入ってくる誰かの話し声。初めて歩く町の、昼下がりの景色。今日の会場では友達とは会えなかったけれど、1人で歩いていても帰り道は退屈しない。行きの道でそこまでのゆとりを持つのは私でも少し難しいけど。
地下鉄の駅に向かう者。JRの駅に向かう者。寄り道をする者。保護者の迎えを待つ者。
進んでいくうちに、人の波は少しずつ枝分かれしていき、比例して喧騒は落ち着いていく。
私はリュックの小ポケットから、スマホを取り出して、切っていた電源をつける。
「あ、ママ?……うん。今終わったとこ。……まあまあかな。うん。」
きっともうずっとシャッターの開かれていないであろう小さな書店の、庇の下に立ち入る。車の通りのないさびれた商店街は、電話をかけるには都合が良かった。
「……うん。……うん。もー、分かってるよ、うるさいなー……うん、はい、じゃあそこで待ってるからね。はーい」
電話を切る。待ち合わせ場所の、駅前のミスタードーナツの近くに移動する。
ママを待っているまでの間、手持ち無沙汰だった私は、無作為に、胸ポケットの底の縫い目に沿って、人差し指を押し付ける。
とん。はずれ。とん。はずれ。きゅっ。あたり。
少し泳がせる。
とん。はずれ。とん。はずれ。とん。はずれ。きゅっ。あたり。
少し泳がせる。
とん。きゅっ。あたり。同じところ。
……はぁ。ぎゅうぅ。
少し泳がせる。
とん。はずれ。……
道行く人々は、そんなちょっとした暇潰しに興じる私には目もくれない。
そうしているうちに、改札口からママが手を振ってやってくる。
私は胸ポケットから手を離し、その手を振りかえして、無邪気な子どものように駆け寄っていった。
おわり


