コンコンコンコン。
かぽっ。かぽっ。
少女は問題を解きながら、脱ぎ捨てた履き物を、無意識に足で弄んでいた。
転がしたり、引きずったり、持ち上げたり、傾けたり。
決して行儀が良いとは言えない仕草。でも。
(……、)
誰も見ていない。気にしない。
試験中のこの時間だからこそできることだった。
「……、——て!」
大問3の旅人算の問題を解き終えて、大問4の確率の問題へ。
文章をしっかり読み込んで情報を整理しなければならない問題。
コン……。
動いていた手が止まる。
反対に、足の動きは無意識のうちに早まっていく。
かぽっかぽっかぽっ。
「——めて!たすけて!しぬ、しぬっ!」
軽快で、リズミカルな靴の音はしかし、筆記の音に紛れる程度の、些細なものだった。
誰も見ていない。気にしない。
まして、そんな音にさえかき消されてしまうほどの小さな叫びなど、誰の耳にも届かない。
「いっ……、あ、え、待って!ねえ、く、くるな!————」
……コンコンコン。
かぽっ。かぽっ。
自身の足すさびによって、脅かされる命があることに、少女は気づかぬまま、問題を解き進める。


