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【番外編】あの子のおもちゃ

真夜中の教室に忍び込んで、自らを縮小して、あの子の机の下で一夜明かして。そして翌朝、見つけてもらう。それが奥井の目算だった。 

 

縮小は上手く行った。最近ネットに書き込みのあった、自己縮小用の隠しコマンドというのも問題なく適用されているらしい。今も奥井の体は学生服に包まれているし、右手には縮小機が握られたままだ。——今のサイズに合わせた大きさのそれが。 

あのコマンドが無ければ、余計な騒ぎを起こすことになっていただろう。 

 

ほんとに。ほんとに小さくなれるんだ。 

元はつま先で無意識に小突いていた机の足。それが、屋久杉のように厳然と聳え立つ光景を前にして、奥井はただ歓喜に打ち震えた。人間としての未練など、彼はとうに捨てていた。 

学校への侵入も、縮小も、全てが計画通りに運んでいる。残すは——1.6センチの小虫として、森川安純という人間に接触すること。 

 

奥井は想像する。迫り来る彼女のつま先を。 

屈託の無い笑顔を振り撒くあの子が、机の陰で、無意識に遊ばせるローファー。その表面の放つ光は、震えるほど冷たくて。起こす地響きは、まるで神様の裁きのようで。 

無事に保護してもらえるかなど、分からない。けれど今はただどうしようもなく、ぼくの世界に絶対的に君臨するあの子の姿を、この目で、仰ぎ見てみたかった。結果、彼女のその身を、自らの命で汚すことになったとしても————。 

 

————そんな風に想いを馳せていられるのが、どんなに幸福で健全な時間であったか、彼はこの時にはまだ、気づいていなかった。