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2話

——おいしい?

声が聞こえた。ここなちゃんの声に違いなかった。

だが、くぐもっているせいか、幼子の声のはずなのに、妙に神々しい響きを帯びていた。

暗闇の中で聞いていると、それが何か、唯一の道標であるようにさえ思えた。

(おいしい、おいしい……)

無心で舐めていたに等しかったが、心菜様がくれた4文字を、うわごとのように繰り返していると、極上の蜜のような気がして、いよいよ舌がとまらなくなる。

自分の意志が介在する余地のない、極限の受動の世界。行為のみならず思考さえも、心菜様に上書きされる。唾でべとべとしたいちご飴を、子どもの指で押し付けられて、無理矢理に食べさせられて、美味しいと言わされて。

この上なく惨めなはずなのに、そんな世界をずっと望んでいたのかもしれない。