「怖いねぇ。人も縮めちゃうんだって……」
箸を止めたままテレビの方を注視していると、いつの間にか向かい側の席についていたお母さんが語りかけてきた。
「あ、うん……。」
わたしはそれに、曖昧な返事しか返せない。
ママ、わたしそれ持ってるよ。
……なんて、もちろん言えるはずもなかった。
いや。
いっそのこと、全部言ってしまおうか。
あのねママ。
隣の人、行方不明になったって言ってたでしょ。
その人も、実は小さくなってて、わたし、保護したの。
でも、なんか。その人、「ロリコン」らしくて。
ねえママ、わたし、どうすればいいのかな……。
けれどやはり、それらの言葉は喉元まで出かかっては消えてを繰り返すばかり。きっと言えば、お母さんは警察に連絡して、わたしと彼を引き離してくれると思う。でも、だからこそわたしは言えなかった。それはひょっとしたら、過保護な親に対していじめの相談をできない子の心境に似ていたのかもしれない。
結局、わたしはうつむいて、諦めたように箸を動かし始めていた。
崩しっぱなしだった卵黄は、白身を伝って皿の上へと溢れ、固まってこびりついてしまっていた。


