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4話(終)

優奈、久しぶりに会った。うれしかった。うれしくて。うれしくて。

でも、なんだか、優奈、かなしそう。だからぼくは、優奈のおっきな指を、だきしめた。すこしささくれている、優奈の、親指。そんな顔しないで。げんきだして。

ギャ!優奈が、ぼくをつきとばした。いたい。そのあとも、何回も、何回も、ぼくを、つきとばした。

いたい、いたいよ。やめて、しんじゃう、優奈、いたいよ……。

でも。ぼくのこと、いじめる優奈、ちょっと、たのしそう。

いたいの、いやだけど。優奈がたのしいと、ぼくも、うれしい。いたい、うれしい、いたい、うれしい……。

きぜつしてたみたい。 

からだ、いたい。あざだらけ。あるくと、もっといたい。 

でも、うれしい。優奈が、いたくしてくれた。 

優奈、すき。優奈、どこ?あっ、優奈、いた! 

いたいの、がまんしながら、あるいた。優奈の、おっきな指、見つけた。 

すりすり。 

(優奈、すき。優奈、すき……) 

すりすり。 

(ココナ、いや。優奈、すき。優奈……) 

すりすり。 

(優奈、やっと、あえた。いかないで、優奈、いっしょいたい、ずっと……) 

 

むぐ。 

優奈、ぼく、つかまえた。 

うごけない。なにも、みえない。優奈の指が、おっきくて。 

でも、なんだか、つめたい。ぬれてる?それに、くんくん。いいにおい。みかんと、あわのにおい。 

つめたい優奈の手も、すき。 

あぅ。 

優奈、ぼくのこと、見てる。きれいで、おっきな、優奈のおめめ。 

うう。 

そんなに見ないで。 

見られたら、ぼく。ぼく。 

うー。おちんちんが……。 

優奈っ、すき、すきっ。優奈っ、優奈っ。 

すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、…………。 

 

(……?) 

 

なんだろう。 

かぜが、ふいてる。すごく、あったかい。 

あったかくて、じめじめして。それに、くらくらするような、におい。 

ふりかえってみる。 

 

(わ、あ……) 

 

そこには、優奈のくちびるが、あった。 

くちびるが、少しだけひらいていて。そこから、あったかいかぜが、ふきつけて、ぼくのかみのけ、ばさばさと、ゆらす。 

ぼくのからだが、シャワーをあびたみたいに、ぬれる。ぬめぬめと。 

ふうぅ。 

はあぁ。 

優奈が、いきをすって、はいて。ぼくのからだ、優奈のいきで、いっぱいになっていく。 

 

(あ、う……) 

 

ココナに、何度も食べられた。 

いやじゃなかった。でも、それがいやだった。 

ぼくは、ずっと、優奈に、たべられたかった。 

優奈、あいしてる。だから。 

くらくてせまいおうちで、いっぱい、いっぱい、ないて。ぼくのからだにのこった、ココナのつばを、優奈のつばだとおもって、おちんちん、さわった。きもちいいけれど、それだけで。さびしくて、かなしかった。 

 

(……すご、い……。) 

 

うそみたいだった。ゆめ、みてるのかな。 

優奈のくちびるが、ちかくなる。ぐんぐん、ぐんぐん。 

もう、優奈のくちびるしか、見えない。 

どきどきする。こんな。だって。 

 

(これが、優奈の、くちびる) 

 

ココナのくちびるよりも、おっきくて。 

ココナのくちびるよりも、いろあざやかで。 

ココナのくちびるよりも、かわいていて。 

そんな、優奈のくちびるが。 

てをのばしたら、さわれそうなくらい、ちかくにあって。 

 

(あ、優奈……) 

 

ねちゃ……。 

優奈の、くちびるのむこうから、音がする。 

あかいくちびるに、くろいすきまが、あいていく。 

 

(ぼくを、たべてくれるんだ) 

 

 

ぶわあっ。 

優奈のいきを、まぢかで、顔にあびる。 

けほっけほっ。 

それは、ココナのいきよりも、ねつっぽくて。においも、すごくて。ぼくは、むせかえる。 

くろいすきまから、優奈の、上の歯があらわれる。 

それは、ココナの、あかちゃんの歯とはちがって、きれいで、するどくて、おそろしい、おとなの歯で。ぼくは、ぞくぞくする。 

くちびるのすきまが、ゆっくりと広がっていく。 

それは、ココナの、かいじゅうみたいな、くちのあけかたではなくて。はずかしがるような、にんげんの、おんなのこの、くちのあけかたで。ぼくは、どきどきする。 

つぅー……。 

はなれていく、うえのくちびると、したのくちびる。そのあいだを、優奈のつばが、ほそい糸となって、のびる。 

それは、ココナのつばよりも、もっと、べとべと、ねとねととしていそうで。ぼくは、もっと、どきどきする。 

優奈の口の中が、見えはじめる。 

ぴんく色にかがやく、優奈のべろが、ゆっくりと、顔をだす。 

ぼくという、おやつを、たべるために。 

 

(うれしい、) 

 

優奈のべろが、近づいて。 

そのうち、優奈のべろの、ひだひだしか、見えなくなって。むし風呂みたいに、あつい空気が、ぼくを包み込んで。 

べちゃっ。 

プールにとびこんだみたいに、ぼくの視界で、優奈のつばが、はじける。 

くちのなかが、優奈のつばで、いっぱいになる。それだけじゃなくて。目も、耳も、鼻も、 

優奈のつばで、いっぱいになる。 

あたまから、足まで、優奈のつばで、べとべとに、濡れて。 

手や足をうごかすたびに、優奈つばが、ねちゃねちゃと音を立てて。 

いきをするたびに、優奈のつばのにおいで、あたまがくらくらして。 

けほっ。けほっ。けほっ。せきこんで、はきだしたものすら、ぜんぶ、優奈の、つばで。 

 

ねばついて、たいへんだったけど、ようやく、ぼくは、顔をあげる。 

そこは、優奈のくちのなかだった。 

せかいでいちばん、うつしくしいばしょ。 

ずっと、ゆめにみていた、ばしょだった。 

 

(……ありがとう、優奈……。) 

 

けしきが、しずかに、くらくなっていく。 

優奈が、くちを、とじていく。べろのうえに、ぼくをのせたまま。 

けしきが、まっくらになる。もう、なにも、見えない。そとの音も、なにも、きこえない。 

どくん。どくん。 

ぴちゃん。ぴちゃん。 

優奈の、くちのなかの音。 

きいていると、なんだか、しずかなきもちになっていく。 

優奈にたべられた、たべものも、みんな、こんなきもちになったのかな。 

 

ごおおぉ……。 

ぼくのからだが、ういていく。ううん、優奈のべろが、うごいているんだ。 

ずちゅ。優奈のくちのてっぺんに、おしつけられる。おおきなべろは、そのまま、ぼくのからだを、れろ、れろ、となめる。 

しゅわん。しゅわん。 

優奈のくちのなかが、つばで、みたされていく。おおきなべろが、あばれて、そのつばに、なみをおこす。そのべろに、つばのなみに、ぼくは、まきこまれる。 

くちゅり、くちゅり。 

優奈のつばのうみに、ぼくのたましいが、とろけていく…………。