優奈、久しぶりに会った。うれしかった。うれしくて。うれしくて。
でも、なんだか、優奈、かなしそう。だからぼくは、優奈のおっきな指を、だきしめた。すこしささくれている、優奈の、親指。そんな顔しないで。げんきだして。
ギャ!優奈が、ぼくをつきとばした。いたい。そのあとも、何回も、何回も、ぼくを、つきとばした。
いたい、いたいよ。やめて、しんじゃう、優奈、いたいよ……。
でも。ぼくのこと、いじめる優奈、ちょっと、たのしそう。
いたいの、いやだけど。優奈がたのしいと、ぼくも、うれしい。いたい、うれしい、いたい、うれしい……。
きぜつしてたみたい。
からだ、いたい。あざだらけ。あるくと、もっといたい。
でも、うれしい。優奈が、いたくしてくれた。
優奈、すき。優奈、どこ?あっ、優奈、いた!
いたいの、がまんしながら、あるいた。優奈の、おっきな指、見つけた。
すりすり。
(優奈、すき。優奈、すき……)
すりすり。
(ココナ、いや。優奈、すき。優奈……)
すりすり。
(優奈、やっと、あえた。いかないで、優奈、いっしょいたい、ずっと……)
むぐ。
優奈、ぼく、つかまえた。
うごけない。なにも、みえない。優奈の指が、おっきくて。
でも、なんだか、つめたい。ぬれてる?それに、くんくん。いいにおい。みかんと、あわのにおい。
つめたい優奈の手も、すき。
あぅ。
優奈、ぼくのこと、見てる。きれいで、おっきな、優奈のおめめ。
うう。
そんなに見ないで。
見られたら、ぼく。ぼく。
うー。おちんちんが……。
優奈っ、すき、すきっ。優奈っ、優奈っ。
すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、すき、優奈、…………。
(……?)
なんだろう。
かぜが、ふいてる。すごく、あったかい。
あったかくて、じめじめして。それに、くらくらするような、におい。
ふりかえってみる。
(わ、あ……)
そこには、優奈のくちびるが、あった。
くちびるが、少しだけひらいていて。そこから、あったかいかぜが、ふきつけて、ぼくのかみのけ、ばさばさと、ゆらす。
ぼくのからだが、シャワーをあびたみたいに、ぬれる。ぬめぬめと。
ふうぅ。
はあぁ。
優奈が、いきをすって、はいて。ぼくのからだ、優奈のいきで、いっぱいになっていく。
(あ、う……)
ココナに、何度も食べられた。
いやじゃなかった。でも、それがいやだった。
ぼくは、ずっと、優奈に、たべられたかった。
優奈、あいしてる。だから。
くらくてせまいおうちで、いっぱい、いっぱい、ないて。ぼくのからだにのこった、ココナのつばを、優奈のつばだとおもって、おちんちん、さわった。きもちいいけれど、それだけで。さびしくて、かなしかった。
(……すご、い……。)
うそみたいだった。ゆめ、みてるのかな。
優奈のくちびるが、ちかくなる。ぐんぐん、ぐんぐん。
もう、優奈のくちびるしか、見えない。
どきどきする。こんな。だって。
(これが、優奈の、くちびる)
ココナのくちびるよりも、おっきくて。
ココナのくちびるよりも、いろあざやかで。
ココナのくちびるよりも、かわいていて。
そんな、優奈のくちびるが。
てをのばしたら、さわれそうなくらい、ちかくにあって。
(あ、優奈……)
ねちゃ……。
優奈の、くちびるのむこうから、音がする。
あかいくちびるに、くろいすきまが、あいていく。
(ぼくを、たべてくれるんだ)
ぶわあっ。
優奈のいきを、まぢかで、顔にあびる。
けほっけほっ。
それは、ココナのいきよりも、ねつっぽくて。においも、すごくて。ぼくは、むせかえる。
くろいすきまから、優奈の、上の歯があらわれる。
それは、ココナの、あかちゃんの歯とはちがって、きれいで、するどくて、おそろしい、おとなの歯で。ぼくは、ぞくぞくする。
くちびるのすきまが、ゆっくりと広がっていく。
それは、ココナの、かいじゅうみたいな、くちのあけかたではなくて。はずかしがるような、にんげんの、おんなのこの、くちのあけかたで。ぼくは、どきどきする。
つぅー……。
はなれていく、うえのくちびると、したのくちびる。そのあいだを、優奈のつばが、ほそい糸となって、のびる。
それは、ココナのつばよりも、もっと、べとべと、ねとねととしていそうで。ぼくは、もっと、どきどきする。
優奈の口の中が、見えはじめる。
ぴんく色にかがやく、優奈のべろが、ゆっくりと、顔をだす。
ぼくという、おやつを、たべるために。
(うれしい、)
優奈のべろが、近づいて。
そのうち、優奈のべろの、ひだひだしか、見えなくなって。むし風呂みたいに、あつい空気が、ぼくを包み込んで。
べちゃっ。
プールにとびこんだみたいに、ぼくの視界で、優奈のつばが、はじける。
くちのなかが、優奈のつばで、いっぱいになる。それだけじゃなくて。目も、耳も、鼻も、
優奈のつばで、いっぱいになる。
あたまから、足まで、優奈のつばで、べとべとに、濡れて。
手や足をうごかすたびに、優奈つばが、ねちゃねちゃと音を立てて。
いきをするたびに、優奈のつばのにおいで、あたまがくらくらして。
けほっ。けほっ。けほっ。せきこんで、はきだしたものすら、ぜんぶ、優奈の、つばで。
ねばついて、たいへんだったけど、ようやく、ぼくは、顔をあげる。
そこは、優奈のくちのなかだった。
せかいでいちばん、うつしくしいばしょ。
ずっと、ゆめにみていた、ばしょだった。
(……ありがとう、優奈……。)
けしきが、しずかに、くらくなっていく。
優奈が、くちを、とじていく。べろのうえに、ぼくをのせたまま。
けしきが、まっくらになる。もう、なにも、見えない。そとの音も、なにも、きこえない。
どくん。どくん。
ぴちゃん。ぴちゃん。
優奈の、くちのなかの音。
きいていると、なんだか、しずかなきもちになっていく。
優奈にたべられた、たべものも、みんな、こんなきもちになったのかな。
ごおおぉ……。
ぼくのからだが、ういていく。ううん、優奈のべろが、うごいているんだ。
ずちゅ。優奈のくちのてっぺんに、おしつけられる。おおきなべろは、そのまま、ぼくのからだを、れろ、れろ、となめる。
しゅわん。しゅわん。
優奈のくちのなかが、つばで、みたされていく。おおきなべろが、あばれて、そのつばに、なみをおこす。そのべろに、つばのなみに、ぼくは、まきこまれる。
くちゅり、くちゅり。
優奈のつばのうみに、ぼくのたましいが、とろけていく…………。


