朝、いつもの時間に起きて。顔を洗って、着替えて、朝食を取って、髪を整えて。
「いってきまーすっ」
溌剌とした挨拶と共に、玄関を後にする。
そのスニーカーの底に、1匹の小人を閉じ込めて。
「ただいまぁー」
夕方。家に帰ると、まず荷物を置いてから、洗面所に向かう。
洗濯かごに、その日使った体操服や、汗拭きタオルを出して、それから、靴下を脱いで、中のものを取り出して。
臭いのついた小人の体を、石鹸の泡のついた指で、揉むように洗う。
夜。
「ねぇね、おやすみ……」
「ん、おやすみー。」
妹を寝かせてから、歯磨きをして、明日の支度を揃えて、2段ベッドの梯子を登って。
大抵の場合、紐を引いて、消灯して、眠りにつく。
けれど、ストレスを募らせた日などは、枕元に置いた小さな箱を開けて、ささやかな小人遊びに興じることもあった。
いつまで、こんなことが続けられるのだろう。
日常を送りながら、優奈はそんなことを思う。
いつまでも、こんな日々が続いていく。
そう疑わずに、男は今日も、恋焦がれた12歳の少女の、足指の幽谷の底へと、落ちていく。
しかして————終わりの時は、突如として訪れる。


