(え?)
情けなくよだれを垂らしながら、目を覚ました時には、もう、全ての事が済んでいて。
受付台の上に見える、女の子の字で記入された書類。
その向こうに立つ優奈の姿を、男は、誰とも知らぬ人間の手のひらの上で見送っていた。
————それでは、お預かりいたしますね。
頭上で響くその声の主の正体を確かめている時間は、残されていなかった。
自立した大人が退屈な面を下げて集う場で、どこか肩身が狭そうに立つその少女に向かって、男は、届くはずもない手を、必死に伸ばした。
少女は、そんな男には一瞥もくれることなく、言った。
————はい、お願いします。
よそ向きの笑顔を浮かべて、小さくお辞儀をした。
その顔が上れるのを二度と目にすることもないまま、男は役所の裏側へと、職員の手の中で丁重に運ばれていった。
およそ1年続いた、佐藤優奈という少女のペットとしての生涯は————突然に、幕を下ろした。


