————ああ、なんだ。
力を入れれば、壊れてしまいそうななほどに華奢な肩。
乾いた土の上に乱れた髪。
「………、………っ!!」
片手だけで掴めてしまう顎。
恐怖に見開かれた瞳。
そこには、指先ひとつで男に神罰を下す唯一絶対の巨女神の面影はなく。
繊細で、無防備な、等身大の女子児童がひとり。大人相手に何もできずにただ、押し倒されていた。
————こんなに簡単に、思い通りにできてしまうのなら。
抵抗の意思を失くしたのを悟ると、男はゆっくりと、口を抑えていた手を離す。
虚ろな瞳は、どこともつかない一点に向けられていて。
半開きの唇からは、薄膜のような唾液が漏れ出している。
がさつき、黒ずんで、骨張った親指が、汚れなき白の顎筋をなぞりながら、やがてその下唇に触れた。
かさついた薄皮の下に潜在する、確かな唇の柔らかさと、言葉を失うほどの小ささが、指先を通して伝わる。
ごくり、と生唾を飲む。
————はじめから、こうすればよかったんだ————。
顎先に手を添え、目を閉じて。
顔を寄せると、研ぎ澄まされた嗅覚が、立ち上るほのかな石鹸の香りを捉える。
身体を清めてきたらしい。いじらしく、自分に会うために?
そんな少女を穢す悦びに、どくどくと血が湧くのを感じながら。
男は唇を、優奈の唇に、ゆっくりと重ね合わせる。
夜風が凪いで。草々が静まり。
まるで時間が止まったように感じられた。
刹那。
稲妻が走るような激痛が、男を襲った。


