お風呂から上がって、スキンケアも済ませて。小人にいつものエサをやって。今日の分の新聞も読んで。
あとはもう寝るだけ。……なんだけど、今日は特別に、小人に「デザート」をあげてみようと思っていた。
初めての試みで、正直いって、かなりドキドキしていた。
……しかし、さっきはほんとに危ないところだった。
もし、愛娘が、米粒サイズの大人を虐めて遊んでいると知ったら、パパはどう思うだろう。……それも、人間さえ縮めてしまう縮小機の話を、知った上で。
もちろん、悲しむだろうし、叱られもするだろう。でもパパ、私に甘いから、なんだかんだ問題にはしないでくれるような気もしていた。どこの馬の骨とも知らない男の人の命なんてどうでもよくて、大事な娘の無実の方を優先しちゃう……全然ありえる話だ。
パパに、ママに、友達に、恋人に。私には、庇ってくれる人がたくさんいる。
でも、今のこの人のことは、パパも、ママも、いたのかも分からない友達も、恋人も……ましてやこの国の法律さえも、守ってくれない。
そうなった時に、いったい誰が、この人を守ってくれるというのだろう。
広い世界の中で、ただひとり虫のように小さくなってしまった、この人のことを————。
冷蔵庫から持ってきていた、練乳のチューブの蓋を回す。それこそが、これから小人にあげようと思っているデザートだ。
10月のはじめに拾って、もう1ヶ月になるのかな。エサはずっと離乳食を指につけて与え続けていた。単純に、指を舐める様が面白いのもあるけど、栄養が取れるし、固形のものはこの小ささでは食べられないだろうし、小人のエサとして理にかなっているのだ、離乳食って。簡単に死なれてしまっては困るから、その辺はちゃんと気を遣ってあげないといけない。
一応、味は毎日変えている。でも、中にはそれなりのもあるけど、基本的には不味い。だから、練乳みたいに甘くて美味しいものを舐めるのは、この人にとっては、ずいぶん久しぶりのはずだった。
そう、いつのまにか、もう11月なのだ。すっかり肌寒くなってしまったことを今、実感した。けれど、これからすることを考えると、冷たい空気に晒された私の体は、じんわりと火照っていく。
そして、胸の高鳴りを抑えながら、私は「それ」に一滴の練乳を垂らす————。
この人にも、誰かしら大事に思う人はいたはずだ。両親とか、兄弟とか、昔からの友人とか、学生時代の恩師とか……あるいは、一途に恋い慕い続けている相手とか。
でも、いずれそんな記憶も全部、私の存在によって上書きされるだろう。
なぜなら————この人のストーリーには、この先もう、永遠に、私のことしか描かれないのだから。
誰もあなたを守ってくれない。誰もあなたに気づいてくれない。誰もあなたを覚えていてくれない。
かわいそうなお兄さん。でも、大丈夫。何も不安に思わなくてもいいんだよ。
そんな世界でも。私だけは。これからもずうっと、一生、かわいがってあげるからね……。
「はぅ、んっ……!♡」
小高く膨れた乳のさきっぽに、甘く痺れるような快感が走る。
才色兼備な11歳の少女の、はじめての情事。それは、自分より一回り二回りも歳の離れた大人の男性に、乳首に滴るミルクを舐めさせる、極めて倒錯した遊戯。
手のかかる子ほど可愛いという真理を、今この瞬間、ようやく理解できたような気がしていた。穴が空いていなければ、人の愛はこぼれて、留まることができないのだ。
男を拾ってからの1ヶ月。ちさとは彼を内側から壊すことばかりを考え、実行してきた。 はじめからその後のことを考えていたわけではない。ただ、壊れていく過程を観察するのが面白かったから。それだけのことだった。
しかし、これからは時間をかけて、空っぽになったその小さな器を、自らの愛だけで満たしていこうと思った。
どれだけ歪んでいても、どれだけひとりよがりでも、それは確かに、愛と呼べるものだった。


