15.友達
翌日の放課後、早帰りの日。私は2人の友達と、いつもと違う通学路を並び歩いていた。
1人はちさと……菅谷知里。賢くて、あとちょっと口が悪い。
もう1人はうっぴぃ……内山陽菜。ミーハー。肌もちもち。ちょっとアホ。
私が転校してきた4年の頃からの、仲良し3人組。けれど5年に上がって、ちさとの受験勉強や、私の心菜のおもりなどから都合が合わないことが多く(うっぴぃはヒマみたいだけど)、こうして放課後に3人で遊ぶのは、ずいぶん久しぶりのことだった。
「ちさとの家、また大きくなった?」
うっぴぃのボケを、ちさとが華麗にスルー。ちなみに2人は、小1の頃からの付き合いだという。人懐っこいうっぴぃが、転校してきたばかりで肩身の狭かった私を気にかけてくれて、そこからちさととも仲良くなった、という流れだった。
それにしたって、ちさとの家はやっぱり大きいと思う。漫画に出てくるキザなお金持ちのお屋敷……とまでは流石に行かないけど、おしゃれで、広いお庭があって、2階建てで、ガレージが付いてて……「一度は住んでみたい」と思うような家だ。
「おじゃましまーす……」
「あら〜陽菜ちゃんも優奈ちゃんもいらっしゃい!外寒かったでしょ?入って入って〜」
玄関では、ちさとのお母さんが出迎えてくれた。美人で、若々しくて、目元のあたりがちさとにそっくり。
「ごめんねぇ、あんまり片付いてないかもだけど」
「えーめっちゃキレイ〜」
「ねー」
「そりゃ張り切って片付けてたからでしょ」
「ね、可愛くないでしょ?コイツ」
「あはは」
他愛もない話を終えると、私たちは階段を登って、2階にあるちさとの部屋に連れて行ってもらった。
ちさとの部屋もまた、綺麗に片付いている。落ち着いた家具に、落ち着いたカーテンに、落ち着いた絨毯。それに微かな、ラベンダーの香りがする。
ごちゃごちゃ散らかってる私の部屋とは大違いだ。……主に、心菜のせいだけど。
「ゆーな家くるの久しぶりだよね」
「多分、1年ぶりくらい?うっぴぃは?」
「言うてウチもそのくらいじゃない?」
「ひーは7月に来たでしょ」
「え?そーだっけ」
「7月11日。私の漫画引き取りに来たじゃん」
「あ、そーだった!あれね全部読んだよ!」
「ホント?どうだったっ?」
「めっちゃ良かった!特に……」
漫画?と思って本棚を見やると、確かにもともとあったはずの漫画が、ほとんど辞書や参考書、それに歴史の漫画なんかに置き換わっていた。ちさとが中学受験に向けて舵を切ったのも、5年生になってからのことで、勉強の邪魔になるからと、うっぴぃに一式譲ってしまったのだろう。
それからは、お菓子やジュースをつまみながら、好きなものの話をしたり、恋バナに花を咲かせたり、ショート動画を撮ったり、わけもなくじゃれあったり……たぶん、世の中の普通の女子たちと同じように、私たちは遊んだ。
……楽しいと時間が過ぎるのが早いって、ホントだなって思う。ここ1ヶ月ほど、色々あって気分が乗らないことが多かったから、今日は久しぶりにこの3人で遊べて、本当に良かった。
そんなこと正直に伝えたら、2人とも「いきなりどうした」みたいな反応するだろうけど。


