13.影響
小人のお兄さんには感謝している。
たとえば今。塾での、国語の授業の時間中のこと。
中年の講師と、塾内で2番目に成績の良い飯島という男子児童が、「真一文字」の読みが「まいちもんじ」か「しんいちもじ」かで口論していた。
以前までの私なら、苛立ちを募らせていた所だ。
小学生レベルの漢字もまともに読めない上に、その間違えを認めることさえできないカス以下の国語講師に対して。それから、チンケな自己顕示欲を満たしたいがために、周りの生徒たちから白い目で見られていることにも気づかず、些細なことで授業の進行を妨害する、幼稚で迷惑千万な永遠の2番手くんに対しても。
けれど不思議だ。虫同士が喧嘩してると思えば腹も立たなくなる。カエルの縄張り争いの動画とか、見てて面白いけど、そんな感じ。
そして、そう思えるようになったのはもちろん、実際に虫同然になった元人間を手に入れてからのことだった。
彼らが生産性の無い口論に勤しんでいる間、私は想像する。蟻のサイズまで縮んだ彼らを、どんな風にかわいがってあげるか。
先生の方は……そうだなぁ、まずはまずはちゃんと、私が教えてあげないとね。小学一年生の「一」の漢字から。それから、目上の人間に対する言葉遣いを教えてあげよう。先生がいつも仰っている通りに……ね。
飯島くんは、いじめてあげたら、いい声で鳴いてくれそう。何かにつけて、私に張り合おうとしてくる飯島くん。純粋な私への対抗心なのか、それとも、それしか私の関心を引く方法を知らないのか。もし後者なら……遊び甲斐のあるおもちゃになってくれること間違いなしだ。
はぁ、ヤバい。誰であっても知り合いは助けてあげるとか言ってたのに、このままじゃ私、ほんとに我慢できなくなっちゃうかも。
だいたい、今日だって結局連れて来ちゃったのだ。私のかわいいかわいい奴隷ちゃんを————最近下ろしたばかりの、お気に入りのショートブーツの中に入れて。
「ちさとちゃん、そのブーツかわいいねーっ」
「あ、これ?SHEINで買ったんだ〜」
さて、問題です。授業前に、後ろの席のなぎさちゃんとこんな会話をしていた時の、ちさとちゃんの心情として正しいものを全て選びなさい。①ブーツを褒められて嬉しかった②何も知らないなぎさちゃんに、本当のことを教えてみたいという衝動と戦っていた③興味のない話題だったので適当に終わらせたかった④中で会話を聞かされているであろう小人の気持ちを想像し、ゾクゾクした……なーんて。ちなみに、正解は②と④でした。
授業中の今も、彼はブーツの中で、私の足の指をぺろぺろと舐め続けている。途中で手を止めたら……お仕置きにぱくっと、足指でその体を食べちゃう。そして、もぐもぐと、じっくり味わってあげるの。……もっとも、彼がちゃんとやってても、たまにつまみ食いしちゃうけど。
一応、名目状は、足を綺麗にしてもらうお仕事。でも、はっきり言って意味のない仕事だ。だってこの人が舐めても舐めても、私の足は汗をかき続けるんだもの。刑務所に入れられた人が穴を掘って埋めてをやらされるようなものだ。
けれど、虐待なんて言われるのは心外。だって、この人はもう、私の奴隷として奉仕している時にしか、自分の存在価値を見出せないというところにまで堕ちてしまったのだから。私に使ってもらえないと、たちまち不安や憂鬱や焦燥感といった負の感情に襲われてしまうのだ。瓶の壁に頭を打ち付けているのをみたことがある。かわいそうに……。だからこうして靴に入れて携帯して、恒常的にご奉仕できるようにしてあげてるの。優しいでしょ?
ま、私がそうさせたんだけど笑。んっくすぐったっ……てか、マジで誰なのこの人、なんで私の足舐めさせられてるの……♡あ、喧嘩そろそろ終わりそう……あーもー、みーんな私の奴隷にしちゃいたい……。


