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3話

(え?)

男がその表情を確認できたのは、ものの数秒の間だった。

なぜなら、ものの数秒後には、男の頭上には、別のものが構えられていたのだから。

天井からの逆光によって、その美しいシルエットがはっきりと浮かび上がっていた。それは次第に男の視界を覆い尽くしていき、シェルピンクの濃淡や、しわのディティール、付着したクレヨンの粉までもが、男の目にはっきり映るまでになっていく。

似たような光景を、ぼくは覚えていた。

小さくなって、はじめて優奈と出会ったあの日。

あの日も、優奈はぼくを見て、同じように眉をひそめて、同じような行動に出たんだ。

でも、あれはぼくを虫と勘違いしていたからで。

今なら、そんなはずはないのに。

それがぼくであると、分かっているはずなのに。

ぼくは、一歩も動くことができないまま。

やがて。顔に、からだに、股に、脚に。

その重みと、熱と、やわらかさを感じながら。

————優奈の左の素足に、踏み潰されていた。

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