かしゃんっ。
プラバンがするりと私の手を離れ、テーブルに落ちる。ビーズが糸から外れて、あちこちに散らばっていく。
うっぴぃ、今、なんて言った————?
ビーズを拾うのも忘れて、2人の方に目を向ける。
うっぴぃの視線も、ちさとの視線も、一つの場所————うっぴぃの手の中の、小さなアロマ瓶に向いている。
「うん、まあ、見ての通り————小人。本物の」
ちさとが答える。
また聞こえた。聞こえるはずのない単語が。
コビト。小人。
「すごーいっ!ね、ねっ、出してみていい?」
「ちょっ、いいけど、潰したりしないでよ!」
「わーい、小人さん出ておいで〜」
耳障りな心臓の音。どこか遠くに聞こえる、2人の会話。
けれど、聞き間違えなんかじゃない。だって、その会話が余りにも、小人という存在をはじめて目にした女の子たちのそれだったから。
「えめっちゃカワイイ〜!ウチ持って帰っていい?」
「ダメっ!私の物なんだから」
まるで物のような扱いを受けているのを聞くと、ひょっとしたら、2人が見ているのは、私が思っているのとは全く別の小人なのではないかという気さえしてくる。
それならば、どれだけ良かっただろう。
「ねーほらっ、ゆーなも来なよ!ヤバいよ、小人だって!」
呼びかけられ、いよいよ逃げ道が失われる。
「……マジ?見せて見せて!」
努めてみんなと同じように、小人を初めて見る女の子の振りをして、私は駆け寄っていく。
ヘアゴムを手首に巻いた、うっぴぃの右手。その手のひらの上には、確かに蟻と見紛うような小ささの小人がいた。
小人は、はじめ私に背を向けていて。肌の色は悪く、毛も濃く、何より生気が失われていて、本当に別人かもしれないと思ったほどだった。
けれど、私の気配を察知すると、その小人は天敵を、あるいは唯一の拠り所を見つけたように、素早くこちらに振り向いて————目が合った。
全くの別人。本当に、それならばどれだけ良かったのだろう。
けれどその時私が目にしたのは、余りにも見覚えのある、あの人の顔だった。


