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3話

(あ、あ……)

びりびり。優奈の声が、ぼくの身体を震撼させる。

膝に力が入らなくなる。

ぼくの中の大事な何かが、音を立てて壊れていく。

控えめな笑顔でぼくを見上げる、記憶の額縁の中の優奈の写真が、炎に灼かれ消えていく。

うわべだけの礼儀ではなかった。見上げる優奈の、透徹した瞳に映るぼくは、いつだって大人だった。

そんな優奈が、「お手」と言った。

ペットに向けるようなまなざしを、ぼくに向けて。

気づけばぼくは、優奈の指を舐めていた。

優奈もそれを、黙って受け入れていた。

静まり返った空気に、欲にまみれた汚い中年男の息遣いと、唾液の濡れる音だけが聞こえていた。

あまりにも優奈の指の塩気がおいしくって、顔をうずめるようにして舐めていた。

一本一本がぼくの舌よりも大きな指紋の、溝の奥まで舐め尽くしていた。

そんなぼくを見ても、優奈はもはや、何も言ってはくれなかった。

「いいなぁ、なんかゆーなに懐いてない?そのコ」

「ね、さっきもずっとゆーなの方見てたし」

「え〜、困るんだけど……」

優奈の指を舐めながら、いつしか、ぼくは泣いていた。

それは、刹那の悦びの涙であり、永遠の哀しみの涙でもあった。