ぱちり。
優奈が明かりを灯すと、ぼくの眼前に、懐かしい景色が広がっていた。
姉妹2人で使っている、木製の2段ベッド。
優奈との思い出の詰まった、電気スタンド付きの勉強机。
その脇にかかった、パステルピンクのランドセル。
(やっと、帰ってきたんだ。)
腕の力が抜けて、気づけばぼくの体は、床の上に落ちていた。
(やっと。やっと…………。)
感極まって、目頭がじんわりと熱くなる。
ラベンダーの香りも、ローズマリーの香りもしないし。
床の上は、クレヨンや自由帳の切れ端で散らばっている。
でも、ぼくはそんな部屋に、ずっと帰りたかったのだ。
優奈がいる、この部屋に。
(……もう、いいよね。優奈……)
ハート形のクッションに腰を落ち着けて、スマホを弄りだした優奈。
今日のことで、友達にメッセージを送ったりしているのかもしれない。
ぼくはそんな彼女に、とことこと近づいていく。
膝を立てて、足をぺたぺた動かして。
……スカートの中が丸見えだ。クッションよりも柔らかそうなふとももが、そのはざまで少しよれている、薄紫色の綿のショーツが、嫌でも目に入ってしまう。
さらにその脇には、燻んだ水色のニーソックスが、お行儀悪く脱ぎ捨てられている。
誰かに見られているなんて、つゆほども思っていないという感じだ。
きっと、ぼくが帰ってきたことを知ったら、優奈、びっくりするだろうな。
顔を見たら、まず、これまでの身勝手を謝ろう。
それから、愛してるって伝えたい。やっぱり、優奈はびっくりするだろうけど。


