痛む後頭部を押さえながら、ぼくは体を起こす。
正面を見やると、山を作っていた2本の優奈の脚が、垂直に伸びている。
優奈が立った。
ぼくははやる気持ちで、その脚の伸びる先を目で辿った。
優奈が、ぼくを見下ろしていた。
明らかに、ぼくの存在に気づいていた。
(優奈っ!)
ぼくはうれしくて、ぴょんぴょん跳ねてアピールした。
ああ。これで、やっと全部終わったんだ。
ぼくの心の中は、多幸感や祝祭感に満ち満ちていた。
思えば、ちさとに捕まっていた間は、ずっと過去のことばかり考えていた。
どこで間違えてしまったんだろう、とか。ぼくの人生ってなんだったんだろう、とか。優奈のいた頃に戻りたい、とか。
でも、今ぼくの頭の中には、これからの希望しかない。
これから、優奈と何をしよう。
これから、優奈と何を話そう。
優奈に想いを打ち明けて、もし、付き合えることになったら。
優奈に膝枕してもらって。
優奈にお風呂に入れてもらって。
優奈と、キスをして。
優奈、と…………。
優奈は、足元の男を見て。そして。
眉をひそめて、嫌悪感を顕にした。


